あれから1年近くが経とうとしていた。 去年あのかぼちゃ頭が俺の前に現れた日、10月31日まではあと1週間。 あの出来事の次の日、俺は床の上で目を覚ました。 夢かとも思ったし、むしろ夢であってほしいと心から願ったが 痛みこそほぼ引いていたものの剥き出しのままで若干赤みが残った性器と、 床に散らばった暴君の破片が夢ではなかったことを証明していた。 正直どうせ2年契約だったわけだし年度末には引越しも考えたが、予算がそれを許してくれなかった。 あそこまで安い物件は他になかったのだ。 というより、あそこは安すぎた。 思い返せば、住み始めた時はそれこそ幽霊でもでるんじゃないかと警戒していたんだ。 ただ1年半何事もなく過ぎたせいで忘れていたわけだが。 まあ、よく考えれば引越しまでしなくても、相手が来る日が決まっているのだから、 その1日だけ誰かの所に転がり込んでいればいい。 そう思って帰宅した俺は、それが甘すぎる考えだと言うことを思い知らされた。 俺の部屋がある2階に上がる階段脇の郵便受けの前で、俺は立ち尽くす羽目になった。 原因は郵便受けに入っていた1通の手紙だ。 封筒には切手も宛先もなく、裏面には目と口を刳りぬかれた妙にファンシーなかぼちゃのイラストがあった。 恐る恐る開けてみれば、中には 『10月31日、家にいなければ誰かが死ぬ』 などという嫌すぎる1文が、しかもご丁寧に赤いインクで書かれている。 しかも血が滴るような感じまでわざわざ演出済みだ。 本当に甘かった。 せめて1ヶ月前から避難していれば知らぬ存ぜぬで通せたのに。 見てしまった以上、さすがに無視はできないだろう。 仮に俺が死ぬと書いてあったら、どこかに避難して死なずに済めばそれで胸を撫で下ろせる。 だが、誰かとなると、俺が死ななくても、 俺のせいで誰かが死んだんじゃないかとこれから一生寝覚めが悪くなること請け合いだった。 本当にあのかぼちゃ頭がこれを実行するかどうかはともかくとして、だ。 こうなれば開き直るしかない。 要はあのかぼちゃ頭とそういう行為をすればいいわけだ。 正直あんなちんちくりんは全くもって趣味じゃないが、それでも肉体的に刺激を与えられれば、 相手がよほどアレでない限り快感を感じてしまうのが悲しい男の性。 問題は、それこそ、子種と一緒に命まで搾り取られるんじゃないかとか、 これから一生付き纏われるんじゃないかとかそういう話だ。 それはまあ今後考えるとして――今年死んだら考える暇もないが――、 こうなったら今年は諦めて相手をしてやるしかない。 俺はそう決心した。 ドアを開けるとかぼちゃ頭がいた。 頭には目と口を刳り抜(中略)好をするものがあったような。 「おかえりなさい、お兄さん」 少女の言葉が象徴するように、俺と少女の立ち位置は約1年前とは正反対だ。 少女が中で、俺が外。 “約”1年前の逆。 俺の手にはさっき郵便受けで取ってきた手紙。 「ま、待て待て待て! まだ1週間あるだろ!」 あわてん坊のかぼちゃ頭がハロウィン前にやってきたなんて歌はねえ! 「その手紙を届けに来たんですけど、面倒くさいのでついでにそのまま寄っていこうと思いまして」 世界を行ったり来たりするのって結構大変なんですよ、などと少女は説明する。 「それなら最初からこんな手紙届けようとするな!」 「そうでもしないと、お兄さんのことだから逃げ出すのではと」 図星だった。 というか普通に逃げるだろ。 さっきの決意もどこへやら、俺はあっさりと怖気づいていた。 「まあ、玄関で立ち話もなんですから、さっさと上がってください」 「ここは俺の家だ!」 もちろん借りてる部屋だけど。 それが俺にできるせめてもの抵抗だった。 部屋に入って鞄を置いた瞬間、かぼちゃ頭の姿が掻き消えた。 「させるか!」 とっさに前に飛びながら身体を反転させる。 俺だってこの1年間何も対策を講じていなかったわけじゃ――、 「あれ……?」 背後に現れていると思ったかぼちゃ頭はいなかった。 「フェイントですよ」 さっきまで少女がいた場所、 つまりは今現在の俺のすぐ後ろから聞こえる声とともに、首筋に指先を当てられる。 あの小さな痛みはまだないが、いつでもそれができるということは説明されるまでもなくわかっていた。 「trick or treat?  どうしますか? 去年のように動けなくされて私にいたずらされるのがいいですか?  それとも今年はお兄さんが自分の意思でもてなしてくれますか? 選ばせてあげますよ」 どっちも嫌だ。 そう言えば勝手に前者になるんだろう。 「お、俺が、やる」 せめてものプライドが、俺にそちらを選択させた。 「なあ、一応聞いておきたいんだが、これしたら俺の命が吸い取られるとかって……ないよな?」 「ありますよ」 こともなげに言われて、俺は絶句する。 「でも別に死んだりはしないですから安心してください。  お兄さんぐらい若くて健康な人なら、1週間くらいだるさが続く程度ですよ」 1週間。 そのだるさというのがどれくらいかは知らないが、命丸ごとに比べたらまだ安いものか。 「どうしてもというなら強壮剤みたいなものを打ってあげましょうか?   そうすれば、これから1週間はむしろ通常の何倍も元気になれますよ」 「どうせその後、反動で1ヶ月苦しむとか言うんだろ」 「いえ、1年です」 「遠慮しとく」 「そうですか、では始めましょう。さて、どんな風にしてくれるんですか」 布団の上にちょこんと座り、丈の余った黒マントを花のように床に広げながらこちらを見上げてくる。 左右にカクカクと揺れるかぼちゃ頭が、少女の期待を代弁していた。 どうするべきか。 よく考えたら、勝手に向こうにやらせておいた方が楽だったんじゃないかと、今更後悔の念が湧いてくる。 見た目だけは幼い少女であるこのかぼちゃ頭に、自分から何かをするというのはさすがに気が引けた。 とはいえ、見た目だけは幼い少女であるかぼちゃ頭に、 いいように弄ばれるのもやはり気が進まないのも確かなのだが。 「そのかぼちゃ、脱がないのか?」 別に本当に頭がかぼちゃなわけではないだろう、たぶん。 「素顔を見せるのは生涯のパートナーだけと決めていますから。  申し訳ありませんが、お兄さんには、まだそこまで気を許しているわけではありません」 いや、むしろそれは歓迎すべきことだ。 「なあ、生涯のパートナー以外と、こういうことしていいのか? やっぱ止めといた方が……」 案外貞操観念が強そうなさっきの言葉に期待して、そう聞いた。 「これは人間で言えば食事ですから。お菓子を食べるのと大して変わりません。  私達の恋愛は、もっと精神的なものですよ」 にべもなく却下された。 「そろそろしてくれないと、私がしますよ?」 「わ、わかった、じゃあとりあえずマントを脱いで、向こうをむいて四つん這いになってくれ」 咄嗟に出た言葉は、さすがにかぼちゃの顔に見られているとやりにくいと言う理由からだ。 最初の宣言通り、今年は基本的に俺に従うつもりなのか少女は素直に指示に従った。 肉付きの薄い、まさに青い果実とでも言うべき尻がこちらに向けられる。 さすがにこれに欲情するほど俺も人間止めてないぞ。 「知り合いのサキュバスのお姉さん曰く、征服欲の強い男性がこの体位を好むそうです。  まして年端もいかない少女相手に、それを要求する人は重症だとも」 「ぐ……」 「ささ、早く早く。さもないと……」 誘うように揺れる双丘。 俺は仕方なくそれに手を伸ばす。 なんというか、結局この少女にいいように弄ばれている気がする。 しかも中途半端にこちらの意思を出せることで逆に屈辱的な気すらしないでもない。 足の隙間から手を差し入れると、少女のそこはもうわずかに湿りを帯びていた。 「1年間我慢してましたから、しっかりお願いしますね」 それを広げるようにさすっていると、徐々に滑りが良くなってくる。 俺は開き直って自分のペニスを取り出した。 半立ちにすらなっていないそれを、少女の愛液で濡れた手で何度か扱いてある程度の硬度を持たせる。 こちらの準備ができたところで少女の後ろに膝立ちになった。 「あれ、もう入れてしまうんですか? それはそれでいいんですけど、さっさと終わらせようとしてません?」 「いや、足をもっと閉じてくれ」 少しだけ物足りなさそうな声音でこちらを振り返った少女が素直に足を閉じる。 俺はその閉じ合わさった少女の太股の隙間に挿入した。 どこか性器を連想させる肉の隙間に、まとわせた愛液の滑りを利用して潜り込ませる。 張りのある太股に両側から挟まれて、さらにペニスが硬度と体積を増した。 「ふふ、すごい熱くて硬くなってます」 ペニスの存在を肌で感じ、一転して上機嫌になった少女の声を聞きながら腰を上げていく。 すぐにペニスの上側が、少女の性器に触れ合った。 「んんぅ……」 より敏感な場所でペニスの熱を感じたのか、少女が吐息を零しながら背筋は震わせた。 そこからは本来の挿入のように腰を前後に動かしていった。 ぬちょぬちょという卑猥な音を立てながら、お互いの性器が擦れ合う。 「ふあ、こ、これ……結構、すごい、です……」 腰を引く時に、ちょうどカリ首の返しが、 硬くなった少女の淫核に引っかかるとピリピリと痺れるような快感が生まれる。 それは少女の側も同じように、いや俺以上に強い刺激になっているらしい。 ようやく主導権を握ることができたような気がして、俺はさらに攻勢をかけた。 前に手を回し、先端というにはあまりに土台の膨らみがない、 中心と呼ぶのがふさわしそうな乳首へと指を伸ばす。 立派に硬くなっているそこを潰すように指で押し込んだり、爪の先で弾くようにも刺激する。 その刺激を覚えこませたところで、あえて一番敏感な場所から指を離し、焦らすようにその周辺をなぞってもみた。 その全てに少女は敏感に反応する。 もちろん腰の動きは休めない。 いつのまにか、俺は少女を感じさせることに没頭していた。 去年のような死の恐怖や、自身の肉体的快楽欲しさからではない行為。 欲しているのは、俺の方が一方的に少女を翻弄しているという精神的な快感。 元々そんなつもりではなかったのだが、確かにこの体位は少女が言った通り征服欲を強く満たしてくれた。 「はっ、やぁ……右と左で、違くて……こんなの我慢でき、ひぅ!?」 少女の愛液でぬめっている右手と、せいぜい表面に薄く汗が浮いているだけの左手。 それらがそれぞれ少女の弱点らしい乳首を責めたてる。 左手だけなら痛みが勝っていたかもしれないが、ぬめりのある右手と、 さらには股間からの刺激が混ぜ合わさるとそれすらも快感として捉えているんだろう。 「は、あ、だめ、だめえぇぇ!」 四つん這いの少女の腕がピンと張り、背中が弓なりに反り返る。 そのままガクガクと痙攣した後、力を失った腕がカクンと折れ、突っ伏してしまった。 ただし腰は下からのペニスと、 さっきまで両胸を責めていた両手が横からがっしりと固定しているせいでまだ高く掲げられたままだ。 むしろ腰だけを高く掲げた今の体勢はひどく獣欲を刺激する。 「や、今、イッたばか、ふわああああ!」 今度こそ、少女の中へとペニスを埋没させていく。 中は煮えたぎる蜜に満たされていて、 腰を進めるたびに結合部からゴポゴポと溢れ出し少女の内股を流れ落ちていった。 「あ、流れてく……それに、中、入ってるぅ……」 少女が呆けたようにそう呟いた瞬間、彼女の中が激変した。 膣襞がまるで1枚1枚別の生き物のように、 途中まで挿入したペニスに纏わり付き、中へ中へ引き込もうとする。 「く、あ……」 背筋を駆け抜けた恐怖で、反射的に腰を引こうとする。 だが、中へ引き込もうと蠕動する膣洞の流れに逆らうことで刺激が一層強くなってしまった。 そのあまりの激感に、今度は腰を引くことに恐怖を覚える。 完全に外に出るまでの、わずか数センチの移動だけで気が狂ってしまいそうだった。 やむを得ず流れに従うように腰を進めると、 今度はペニスと膣の接触する範囲が広まったことで快感が倍増する。 行くも地獄、戻るも地獄、いやこの場合天国だろうか。 辛うじてその場に留まることで刺激に慣れようとして、けれどそれすらも許されなかった。 「止まってたら、駄目ですよぉ……、もっと……もっとくれないと」 少女が淫靡に腰をくねらせはじめる。 「うあ、ちょ……待っ……」 刺激を減らすために何とか少女の腰の動きに合わせようとするのだが、 まるでこちらの考えを読んでいるかのように裏をかかれて自滅する。 搾り取られる、そんな言葉がこれ以上当てはまる状況はなかった。 さっきまで感じていた優越が一瞬で砕かれる。 代わりに心を占めていくのは抗い難い射精の予感。 せめてもの意地が、その敗北の瞬間をわずかでも遅くしようとあがいた。 けれど、それもほんの一瞬のことでしかない。 「で、出るっ!?」 「んあああああ!」 容赦なく搾乳するかのような激しさでペニスを握り締められる。 その圧力は最初は精液の流れを押し止め、 けれど次の瞬間その圧力さえ振りきった熱い流れが輸精管を走り抜けていく。 自慰の時とは比べ物にならない愉悦に脳が焼かれ何も考えられなくなった。 ただただ少女の1番奥で白濁液を噴出させる事だけが俺の全て。 自分の中の何かが抜けていく感覚。 これが生気を吸われるという事なのか。 「あははははは、出てる、いっぱーい出てる!」 強すぎる刺激に朦朧とする意識の中で少女の狂気じみた哄笑が聞こえた。 射精時の快感も自慰の数倍なら、終えた後の虚脱感は数十倍だった。 最後の1滴まで注ぎ込んだ後、身体を支えている事すらできず横に倒れこんだ。 萎えた性器をしまう事すらできない。 すでに黒マントを纏ったかぼちゃ頭が横に立ち、こちらを見下ろしていた。 「なかなか良かったですよ。お兄さんも気持ち良かったでしょう?」 少女の声音にもわずかに興奮の余韻とでも言うべきものが感じられるが、 指一本動かせない俺と、平然と立つかぼちゃ頭。 立場の違いを思い知らされる。 悔しいとは思わない。 そんなことを思えるだけの気力は今の俺にはなかった。 「私、お兄さんのこと気に入っちゃった。  もしかしたら、いつかはこのかぼちゃの下も見せてあげられるかもね」 少女の口調がいきなり砕けたものになる。 それが何を意味するかということですら、考えるのが億劫だ。 何か、とてつもなく重要な事のような気がするんだが。 「じゃあ、また来年だね」 その言葉が耳に届いた直後、少女の姿が掻き消えた。 さすがに仰向けに寝ている俺の背後に現れる事はない。 いきなり静かになった部屋で、俺はもう瞼を支えている事ができなかった。

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